裁判例からみる給与と外注費の違い
- 2016/10/26
- 税務
以前、給与と外注費の違いについてご紹介しました。→「税務調査で外注費が給料に⁉」
今回は、裁判例の中から、塾がその講師に支払った金銭が、給与なのか外注費なのかについて争った事例をご紹介します。
【2013.04.26東京地裁判決】
この裁判は、塾がその講師に支払った金銭を外注費とする納税者と、給与に該当するとする税務署側が争ったものです。
塾講師が受取る金銭が、給与所得であれば給与に、事業所得であれば外注費に該当することになります。
まず、裁判所は、給与と外注費の違いについて、最高裁昭和56年判決から次のように述べています。
(事業所得である)外注費について
「事業所得とは,自己の計算と危険において独立して営まれ,営利性,有償性を有し,かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう」
(給与所得である)給与について
「これに対し,給与所得とは雇傭契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。なお,給与所得については,とりわけ,給与支給者との関係において何らかの空間的,時間的な拘束を受け,継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があり,その対価として支給されるものであるかどうかが重視されなければならない」
その上で、塾側と講師が結んだ「塾講師基本契約書」「個人指導契約書」をもとにどちらに該当するのかを判断しています。
先に結果をお伝えすると、裁判所は、給与に該当するという判決をくだしています。
その判断の基準となったのは、主に次の3点です。
1.報酬の決定方法
行った講義や個別指導の内容の優劣や成果ではなく、業務に従事した時間でその金額が決定されていること。
2.費用の負担について
交通費やテキスト代などの負担は塾側であり、その労務の提供等に当たって必要な費用を負担する義務を負っていない。
3.労務の提供について
講義や個別指導は、塾とその生徒との間の契約において定めた業務場所や時間数に従ってその労務の提供等をすべき義務を負っている等、空間的・時間的拘束を受けている。
この判決のように、給与なのか外注費なのかを判断する基準は、あえて一言でいうならば、その「独立性」です。
これは、任意に定めることができるわけではなく、その実態で判断することになります。
税額に影響する項目ですので、慎重に判断しましょう。