住宅借入金等特別控除と繰上返済
- 2016/02/10
- 税務
住宅借入金等特別控除とは
住宅借入金等特別控除とは、住宅ローンなどを利用して住宅の購入等を行い、一定の要件を満たして居住すれば、住宅ローンなどの年末残高の合計額等を基準とした一定の金額を、居住した年より10年間にわたり所得税額(控除できない場合には、住民税額)から控除するものです。この制度は、平成31年6月30日までに居住した分について適用されます。
控除額は住宅ローンなどの年末残高の合計額等を基準に計算するため、住宅借入金の年末残高が多いほど控除を受けられる金額は大きくなります。
繰上返済との関係
繰上返済を行うと利息の総支払額が減少することは、よく知られています。
それでは、繰上返済と住宅借入金等特別控除との関係はいかがでしょうか?
次の例をご覧ください。
-例-
住宅借入金4,000万円、25年返済、金利1.8%(変動なし)
住宅取得日:平成27年6月(同日居住開始)購入額4,000万円
住宅借入金特別控除:期間10年、控除率1.0%
平成29年に500万円を繰上返済
繰上返済により利息の総支払額の減少分は、2,227,225円とする。
繰上返済をした場合 繰上返済をしなかった場合
年 | 借入金残高 | 控除額 | 年 | 借入金残高 | 控除額 |
平成27年 | 38,718,972 | 387,100 | 平成27年 | 38,718,972 | 387,100 |
平成28年 | 37,414,885 | 374,100 | 平成28年 | 37,414,885 | 374,100 |
平成29年 | 31,087,324 | 310,800 | 平成29年 | 36,087,324 | 360,800 |
平成30年 | 29,645,867 | 296,400 | 平成30年 | 34,735,867 | 347,300 |
平成31年 | 28,178,464 | 281,700 | 平成31年 | 33,360,084 | 333,600 |
平成32年 | 26,684,648 | 266,800 | 平成32年 | 31,959,537 | 319,500 |
平成33年 | 25,163,943 | 251,600 | 平成33年 | 30,533,780 | 305,300 |
平成34年 | 23,615,865 | 236,100 | 平成34年 | 29,082,360 | 290,800 |
平成35年 | 22,039,922 | 220,300 | 平成35年 | 27,604,814 | 276,000 |
平成36年 | 20,435,612 | 204,300 | 平成36年 | 26,100,672 | 261,000 |
合計 |
| 2,829,200 | 合計 |
| 3,255,500 |
この表から、繰上返済をしたことによる税額控除の減少分は、3,255,500円-2,829,200円=426,300円となることが分かります。
このように繰上返済を行うと税額控除を受けることのできる金額が減少してしまうことになります。
しかし、利息の総支払額の減少分は2,227,225円ですので、両者を比較した場合、繰上返済を行った方が、金銭的にメリットがあることになります。
どちらも借入金残高を基準に計算しますが、一般的には支払利息の利率の方が高いため、支払額総額で考えた場合には、繰上返済を行う方が金銭的にメリットがあります。
ただし、住宅借入金等控除は毎年税額が控除されるのに対し、繰上返済の場合は、返済方法にもよりますが、効果を実感できるのは将来になります。
繰上返済を行う場合には、その時点から将来までの経済状況などもふまえた上でのシミュレーションを行うことをおすすめします。