役員登記していない親族への給与等
- 2016/09/28
- 税務
登記上の役員でない親族に対して給与等を支払う場合には、特に注意しておかなければならないポイントがあります。
役員に対する給与等か、従業員に対する給与等かによって、法人税法上、その取扱いが大きく異なります。
その支払った給与等が、「損金算入できるか否か」という点です。
役員給与は、法人税法上、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「一定の利益連動給与」に該当する場合に、原則として損金算入できます。
したがって、従業員と同様に役員に対して賞与を支給した場合には、損金算入できない(経費にならない)ということになってしまいます。
登記上の役員に給与を支払うと、法人税法上は、役員給与の取扱いになるのは異論のないところだと思います。
ところが、登記上の役員でなくても、法人税法上は役員とみなして、役員給与の取扱いになる場合があります。
役員とみなして法人税法を適用するので、これらを「みなし役員」といいます。
役員登記していない親族へ従業員と同様に給与等を支払う場合には、その親族が「みなし役員」に該当していないことを事前に確認しておかなければなりません。
後の税務調査で「みなし役員」と認定されてしまうと、思わぬ税負担を強いられることになりますから要注意です。
○みなし役員とは
みなし役員とされるには、次の2つの要件があります。
- 会社の使用人以外の者(会長や理事長、相談役等)で、会社の経営に従事しているもの
- 同族会社の使用人のうち特定の要件(株式所有割合の基準)を満たしている者で、会社の経営に従事しているもの
いずれも「会社の経営に従事している」ということがポイントになってきます。
これには、税務上の定義はなく実質的に判断することになるので、税務調査でも論点になることがよくあります。
会社の経営方針・売上の計画・従業員の採用や経理・総務に関する決定、資金繰りなど、会社の重要事項の決定にどれだけ関与しているかが判断材料になります。
特にオーナー会社の場合は、従業員として給与等を支払っていたつもりが、役員とみなされて、支払った給与等の全部又は一部が経費として認められないといった事態が起こりやすい傾向にあります。
こういったことにならないためにも、ポイントをしっかり押さえておくことが重要です。
また、事業承継対策として会社の株式を親族に贈与した場合など、株式保有割合が変動して後は、「みなし役員」に該当してしまう可能性が高くなりますので、その都度改めて判定することをお勧めします。